ANA、JAL、UA(ユナイテッド航空)などの主要航空会社がマイレージプログラムの改悪(特典航空会社必要なマイルの引き上げやエクスカーショニスト・パーク終了)を相次いで実施している背景と対策について、以下に解説します。
目次
改悪の主な原因
- 航空業界の収益環境の変化
- 燃料費高騰や人件費上昇により、航空会社のコスト増が続いています。特に2020年以降のパンデミックで大打撃を受けた後、収益回復のために「顧客からより多くの収益を引き出す」戦略を採用。
- マイレージ特典座席の削減(有料枠の拡大)や、マイレージの「価値」を意図的に低下させることで、現金収入を優先。
- マイレージの過剰発行
- クレジットカードや提携サービスの拡大でマイレージが大量に供給され、航空会社の負債(未使用マイル)が膨らみました。改悪は「マイルの希薄化」による負担軽減が目的。
- 需要の高まりと座席不足
- 旅行需要の回復により、通常運賃の座席が売れる状況下では、マイレージ特典用の座席を減らす傾向が強まっています。
- 競争環境の変化
- LCC(格安航空会社)の台頭で、伝統的な航空会社は「マイレージ特典」以外の差別化(例:ハイエンドサービス)にリソースを集中。
主な改悪内容の例
- ANAマイル
- 2025年6月24日発券分より、ハイシーズン国際線特典の必要マイル数増加(例:ファーストクラス 日本ー北米往復が200,000マイル→300,000マイルに)。
クラス | ローシーズン | レギュラーシーズン | ハイシーズン改悪前 | ハイシーズン改悪後 |
---|---|---|---|---|
エコノミー | 40,000 | 50,000 | 55,000 | 72,000 |
プレエコノミー | 62,000 | 72,000 | 77,000 | 101,000 |
ビジネス | 100,000 | 105,000 | 110,000 | 165,000 |
ファースト | 150,000 | 170,000 | 200,000 | 300,000 |
ハイシーズンには30%(エコノミークラス)、40%(プレエコノミークラス)、50%(ビジネスクラスおよびファーストクラス)のマイルを増加します。
- 世界一周特典航空券終了。
ANAは、提携航空会社のマイレージ航空券だけでなく、自社航空券の片道交換も可能になります。 これが今回の変更で最も大きく、ポジティブな変化です。
- JALマイル
- 2025年6月10日発券分より、ハイシーズン国際線特典の必要マイル数増加(例:ファーストクラス 日本ー北米片道が100,000マイル→140,000マイルに)。
都市 | エコノミー | プレミアムエコノミー | ビジネス |
---|---|---|---|
ソウル | 7,500 | – | 18,000 |
広州、 大連, 天津, 北京 | 10,000 | – | 24,000 |
上海浦東 | 10,000 | 15,000 | 24,000 |
上海虹橋 | 11,000 | 16,000 | 26,000 |
台北-東京成田, 大阪, 名古屋 | 9,000 | – | 24,000 |
台北-東京羽田 | 11,000 | – | 26,000 |
シンガポール | 13,000 | 25,000 | 40,000 |
バンコク JL31/34 | 17,500 | 30,000 | 45,000 |
バンコク-東京ほか路線 | 13,500 | 25,000 | 40,000 |
バンコク-大阪, 名古屋 | 12,500 | 20,000 | 37,500 |
シドニー | 23,000 | 31,000 | 45,000 |
メルボルン | 25,000 | 35,000 | 45,000 |
パリ, ロンドン | 27,000 | 40,000 | 57,000 |
フランクフルト, ヘルシンキ | 23,000 | 38,000 | 55,000 |
ハワイコナ | 25,000 | 35,000 | 45,000 |
ハワイホノルル | 20,000 | 30,000 | 43,000 |
北米 | 27,000 | 40,000 | 55,000 |
基本マイルは、例えば北米-日本路線では、片道エコノミーが25,000から27,000に8%の増加。 プレエコノミーは32,500から40,000へと23%の値上げ。 ビジネスクラスは50,000から55,000へ10%増。 プレエコノミーの増加を除けば、増加幅はすくないです。
都市 | ローシーズン | レギュラーシーズン | ハイシーズン |
---|---|---|---|
上海, 香港 | 36,000 | 43,000 | 50,000 |
シンガポール, バンコク | 67,500 | 75,000 | 82,500 |
シドニー | 90,000 | 97,500 | 105,000 |
パリ, ヘルシンキ, ロンドン | 110,000 | 125,000 | 140,000 |
ハワイ | 90,000 | 100,000 | 110,000 |
北米 | 110,000 | 125,000 | 140,000 |
北米-日本線はローシーズン中に7万から11万に増加し、最大の増加率は57%。 レギュラーシーズンは85,000から125,000へ47%の増加。 ハイシーズンは110,000から140,000へと40%の増加。 ファーストクラスの引き上げは非常に大きいです。
- UAマイレージプラス
- 2025年11月24日以降、UAマイレージプラスのアップグレードがダイナミックになります。
- 8月21日以降、「エクスカーショニスト・パーク」を終了。
- 8月21日以降、Y/B/Mクラスを予約したプレミアム会員は即時アップグレード特典を終了。

個人でできる対策
- マイルを「貯めすぎない」
- 改悪は突然発表されるため、必要マイルが貯まったら早期に交換。特に長期保有はリスク。
- 柔軟な利用を心がける
- 閑散期や準繁忙期を選ぶ(必要マイルが少ない場合特典利用)。
- 近隣空港や代替路線を検討(例:羽田→成田、関空→ソウルなど)。
- クレジットカード戦略の見直し
- 還元率の高いカードに切り替える(例:ANA・JAL提携カード以外でも、汎用ポイント(Pontaポイント、Vポイント)をマイルに変換可能なカードを活用)。
- 特典付帯保険や空港ラウンジなど、マイル以外のメリットも比較。
- ポイントの分散貯蓄
- 1つのプログラムに依存せず、複数の航空会社やホテルプログラムを併用。
- 例えば、ANAマイルとJALマイル、アメリカ航空、アラスカマイルを貯め、改悪時に有利な方を選択。
- キャンペーンや提携サービスの活用
- 航空会社のショッピングモール(JALモールなど)やボーナスマイルキャンペーンを積極利用。
- 上級会員を目指す
- エリート会員(プレミアムメンバー)になると、特典枠の優先アクセスや追加割引が適用される場合あり。
今後の見通し
- 航空会社の収益優先姿勢は続くため、改悪傾向は当面継続する可能性が高い。
- 一方で、顧客離れを防ぐため「特定の層(高額利用者)」に向けた特典は維持される傾向あり。
重要なのは「マイルは通貨のように価値が変動する」と認識し、戦略的に使うことです。こまめに情報をチェックし、柔軟な対応を心がけましょう。
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